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[ふるさと納税で所得税率が変動して自己負担額が増す?] 検証:限度額以内でも負担2000円を超える場合は第2限度額に抑える選択(ワンストップ特例で回避も)

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第2限度額に関する回避方法
[検証]:第2限度額に引っかかる場合にワンストップ特例を選択した方が得する例

ポイント

「住民税」で決まる第1限度額(一般的な限度額)と、「所得税」で決まる第2限度額(税率変動限度額)、「一時所得」が課税されるまでの第3限度額、いずれか小さい額が自己負担2000円で収まるふるさと納税額の限度。

「寄附金控除で所得税率が変動した場合は自己負担額が2,000円で済まなくなる」という状況についてです。あまり詳しく解説されていない所得税における特徴が、全額控除されるはずの限度額を下回るもう一つの限度額を作ってしまうことがあります。

「ふるさと納税」とは

「ふるさと納税」は別名「ふるさと寄付金」で、地方自治体(都道府県市区町村限定)に、所定の方法で寄付すること

寄付先は、そこが自分の出身地だとか、過去に住んでいたとかは関係ありません。(町内会や学校、公益法人、政治団体などへの寄付とは種類が異なります。)

この寄付の翌年に所得税の確定申告をすることにより(※確定申告義務のないサラリーマン等なら、所定の手続きにより5カ所の寄付まで確定申告不要)、

納める税金(給料から引かれたり自分で納付したりする所得税や住民税)から、自己負担額を差し引いた金額(最大で寄付した金額から2000円を除いた額:例えば寄付1万円で最大8000円)を減らしてもらえます

つまり、納付する税金の一部を、好きな町などへの寄付金に変えることができます。

それだけではなく「ふるさと納税」なら、寄付に対する御礼の特産品等を自由に選び、送ってもらうことができます。「御礼の品が自己負担額以上の価値があるもの」を選ぶことで、結果的に家計の出費が減ることになります。

ただし、最大限の減税効果を得る(自己負担額を少なくする)には、所得状況に応じた一定限度の寄付額に抑える必要があります。

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■第1限度額=一般的に解説されている「住民税」で決まる限度額

一般的に限度額として解説されているのは、『住民税の所得割額』から計算される限度額です。

これは「住民税における寄付金税額控除の特例控除限度額が所得割額(調整控除後)の2割」という、以下の等式です。説明の便宜上、この限度をこのページでは「第1限度額」と書きます。

(ふるさと納税限度額 - 2000円)×特例控除割合
  =住民税の調整控除後所得割額×20%

しかし、これによって計算された限度額は住民税しか考慮していません。
ですので、状況によっては、
「ちゃんと限度額を計算してその範囲内でふるさと納税をしたのに自己負担額が2000円を上回ってしまう」なんてことがあります。

自己負担額が2000円を超えてしまう原因はいくつかありますが、
所得税への影響を考慮することで、より低い限度額(自己負担額が約2000円で済むふるさと納税額)がある場合があります。

(※)以下で説明する新たな2つの限度額は、所得税率が10%以上となる場合のみ計算する必要があります。また住宅ローン控除による自己負担額の増加とは別の問題(「■2000円自己負担に収まらない原因は他にもある」を参照)となります。

■第2限度額=「所得税」における限界税率が適用されている部分の課税総所得金額

もう一つの限度額(税率変動限度額、以下で第2限度額と表示)は、『所得税の総合課税の所得』で決まる限度額です。分離課税の所得が変わっても、この第2限度額は変化しません。

まず、限界税率とは所得税においてその人に適用されている※最大の所得税率(総合課税分)です。

※一定の所得ごとに適用される税率が異なります(超過累進税率)。

「課税される所得金額」が195万円以下なら5%、195万円を超え330万円以下なら10%です(国税庁HP)。

そして、この「課税される所得金額」が、課税総所得金額(総合課税分)です。

給与のみの場合は、給与額面から給与所得控除額と所得控除額を差し引き、千円未満を切り捨てた金額です。

ですので、『第2限度額:所得税における限界税率が適用されている部分の課税総所得金額』とは、
例えば課税される所得金額が196万円なら、
限界税率が10%であり、その10%が適用される部分は196万-195万=1万なので、
第2限度額は1万円となります。

もう一つ具体例をグラフで見ます。

一般的な限度額が10万円の場合で、第2限度額が5.8万円の場合の自己負担額のグラフです。(ツールのグラフ作成機能より)

ふるさと納税第2限度額グラフ

一般的な限度額を超えていないのに、第2限度額を超えると自己負担額が増加している様子が分かります。

追記:第2限度額について、高額所得者の場合での解説記事↓

第2限度額を考慮した場合のシミュレーション

次の記事リンクは【第2限度額】を考慮したふるさと納税限度額の計算ツールです。

以下は収入が給与のみの場合で、他の設定は単身、40歳未満のシミュレーションです。(社会保険料は毎月の平均月給に各料率をかけたものを用います。)

まず、住民税所得割額から計算する第1限度額のみの場合は以下のようになります。急に変化しているところが、所得税率が変化した給与の部分です。
第1限度額のみ

この第1限度額における自己負担額を計算したものが次のグラフです。下の方に点が集まっているのが2000円となる自己負担額ですが、所得税率が変化した直後に自己負担額が2000円を上回って、その後下がっていくようになっています。
第1限度額における自己負担額

もう少し分かりやすいように横軸を課税所得(給料収入だけなら給料から給与所得控除額を引き、次に各種所得控除額を差し引いた金額)として拡大します。課税所得195万円までが所得税率5%、330万円までが所得税率10%です。一つ上の所得税率に移った直後に自己負担額が増えています。
所得税率が変わってすぐのときは、第1限度額でふるさと納税すると金額が多すぎて自己負担額が2000円に収まらなくなるという結果になりました。
第1限度額における自己負担額

今度は、第2限度額を考慮した場合は、以下のようになります。
所得税率が変わってすぐのときは、第1限度額でふるさと納税すると金額が多すぎた部分を第2限度額が代わりに金額を低く抑えています。(この限度額の谷が発生する給与額は、社会保険料や生命保険料などによって変化します。)
第2限度額を考慮

もう少し分かりやすいように横軸を課税所得として拡大します。課税所得195万円までが所得税率5%、330万円までが所得税率10%です。一つ上の所得税率に移った直後に谷ができています。
第2限度額を考慮

第2限度額を考慮した場合は、自己負担額が2000円付近に収まりました。(最初の自己負担額0円の給与額は給与年収103万円の所得税非課税の場合です。)
第2限度額を考慮した場合の自己負担額

第2限度額に関する回避方法

ワンストップ特例制度

ふるさと納税において「ワンストップ特例制度」を利用すると、この第2限度額の問題はなくなり、これまでどおり第1限度額で自己負担額が2000円に収まると考えられます。詳細の検証は次の「第2限度額に引っかかる場合にワンストップ特例を選択した方が得する例」を参照してください。

その理由は、「ワンストップ特例制度」では所得税においてふるさと納税分の寄附金控除を計算しないから、です。というのも、第2限度額が発生するのは、所得税において寄附金控除をする前と後で所得税率が変わる場合があるからです。

細かくいうと、「ワンストップ特例制度」は住民税側で、『所得税ではこれくらい控除できるだろう』として一定の率を使って、所得税の控除分に代わる「申告特例控除」を追加します。率が控除の額によって変化するという難しい計算はしません。

ただし、この回避方法は「ワンストップ特例制度を利用」という条件があります。確定申告が必要な人は、そもそも「ワンストップ特例制度」が利用できません。

ワンストップ特例について、詳しくは以下の記事にまとめました。

確定申告で申告する所得控除を調整

ツールで計算してみて第2限度額が出てきてしまっている場合でも、所得控除を増やすと第2限度額が発生しなくなることがあります。

『ごく限られた状況』では、年が明けて収入が確定してからでも第2限度額を操作することができます。

それは、確定申告で申告するかしないかを選択できるもので調整することです。

確定申告で「申告するかしないかを選択できるもの」とは、具体的には医療費控除や社会保険料控除、雑損控除、寄付金控除などです。

医療費が年間10万5000円くらいの場合、医療費控除額は10万円が引かれて5000円くらいで、ほとんど節税効果がないような場合は申告しないのが普通ですが、「第2限度額が数千円」とかの微妙なケースでは、医療費控除をすることで第2限度額が解除されることがあります。

その他には、家族の分(主に20歳を超えた大学生の子供)の国民年金保険料をあなたが払っている場合で、2年分を一括払いしている場合では、1年分の保険料か2年分の保険料か、どちらで社会保険料控除を申告するかは選択できることとなっています(以下の国税庁のホームページより)。年末調整では1年分で申告しておけば、確定申告で調整できる余地を残しておけます。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1130_qa.htm

他にもあるとすれば以下のような場合です。

・雪国であれば、「雪下ろし費用」を雑損控除で申告できるか検討してみる。

・普段、日本赤十字や共同募金会への寄付をしているのに確定申告で申告していなければ、それらの領収証を添えて寄付金控除に追加して申告を検討してみる。

追記:確定申告で申告する配当を調整

第2限度額は、総合課税分の所得が関係していますので、総合課税で申告選択ができる所得があれば確定申告で調整できます。

それができそうなのは、配当金です。

株式の譲渡損と相殺する必要のない年であれば(相殺すると自動的に分離課税となってしまう)、源泉徴収ありの口座ごともしくは配当金受領書ごとに総合課税申告/申告不要を選択できるため、調整に利用できそうです。

[検証]:第2限度額に引っかかる場合にワンストップ特例を選択した方が得する例

「確定申告とワンストップ特例は、どちらを選択しても納税額は変わらない」と役所では説明されるけど、実際に計算してみるとどうなのかを検証します。

検証に使うのは、公的機関の計算サイトで、
所得税はもちろん、国税庁の「確定申告書作成コーナー」(平成28年分最新)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tokushu/index.htm

住民税は、標準税率を採用している東京都江戸川区の住民税額試算シミュレーションサイト(平成27年収入に基づく平成28年度分)
http://www.tax-asp.e-civion.net/tax-project/tax/edogawa_top.html

両方とも計算後に申告書を作成できるので、この試算結果が間違ってはいないということを前提とします。(住民税の計算サイトは1年遅れですが、税構造に変化はないのでそのまま平成28年の収入で計算します。)


まず、設定です。
第2限度額が発生するためのテストケース(所得税において限界税率が適用される部分の課税総所得金額が寄付金額より少ない場合)として、
土台は給与645万円、社会保険料控除額90万円、加えて基礎控除のみとします。これにふるさと納税額を加えていきます。

最初にこの土台のみで、一般的なふるさと納税の限度額(住民税の所得割額から計算される、控除が最大限となるふるさと納税額)を計算します。

以下が土台における住民税の計算結果です。
ワンストップ特例を選択した方が得する場合の検証

ワンストップ特例を選択した方が得する場合の検証

調整控除後の所得割額の合計(201,700+134,500)が336,200円です。
これをふるさと納税の限度額の式に当てはめると

(ふるさと納税限度額 - 2000円)×特例控除割合
  =住民税の調整控除後所得割額×20%

特例控除割合は横浜市のふるさと納税解説サイトから、(課税総所得金額338.8万-人的控除額の差5万)が333.8万なので、0.6958ですから、
限度額は、98,636円となります。以後の計算簡略化のため、98,000円としておきます。これを便宜上、第1限度額と呼びます。ちなみに、この場合の第2限度額は42,000円です。

次に土台における所得税を計算します。所得税額は245,100円です。(説明のため、あえて年調未済で計算しています。)
ワンストップ特例を選択した方が得する場合の検証

土台は出来上がりました。
給与645万円、社会保険料控除額90万円、加えて基礎控除の場合、
所得税額は245,100円、住民税額は341,200円、ふるさと納税の第1限度額は98,000円です。

ここから、ふるさと納税を98,000円する場合に、①確定申告を行うケースと、②ワンストップ特例を使うケースに分けます。

①確定申告を行うケースで、所得税額を計算します。所得税額は231,400円です。ふるさと納税なしの場合との差額は13,700円です。(年末調整後の場合では還付となり、端数が少しだけ異なります。)
ワンストップ特例を選択した方が得する場合の検証

①確定申告を行うケースで、住民税額を計算します。住民税額は264,800円です。
ワンストップ特例を選択した方が得する場合の検証

よって、①確定申告を行うケースでは、ふるさと納税を第1限度額まで行った場合、軽減される税額は、
(245,100-231,400)+(341,200-264,800)=90,100円
となり、自己負担額は98,000-90,100=7,900円となります。

この結果だけでも、2,000円の自己負担になっていないということが分かります。
原因は、所得税における課税所得の333.8万円が330万円から3.8万円しか飛び出ていないことです。寄付額から2千円を引いた9.6万円のうちの3.8万円分だけ税率20%の税額が控除され、残りの(9.8-0.2-3.8)=5.8万円分が税率10%で控除されるため、5.8万円×10.21%=約5,900円の自己負担が増え、それに2,000円を足すと約7,900円となります。

次に、②ワンストップ特例を使うケースです。
この場合は、所得税においては何ら変化がないので土台の税額のまま、245,100円です。

②ワンストップ特例を使うケースで、住民税を計算します。
住民税の計算サイトで、ワンストップ特例を適用するところにチェックを入れるだけで計算できます。
住民税額は、245,200円です。
ワンストップ特例を選択した方が得する場合の検証

ワンストップ特例の場合の寄付金税額控除額の計算結果は次の通りです。
ワンストップ特例を選択した方が得する場合の検証

よって、②ワンストップ特例を使うケースでは、ふるさと納税を第1限度額まで行った場合、軽減される税額は、
341,200-245,200=96,000円
となり、自己負担額は98,000-96,000=2,000円となります。

①確定申告を行うケースでは自己負担が7,900円なのに、②ワンストップ特例を使うケースでは2,000円という異なる結果になりました。

不思議だと思われる方は、ご自身でいろんなケースを試してみてください。

第2限度額を超えた場合の自己負担額の計算例

(前提として、ワンストップ特例を利用しない場合、つまり確定申告が必要な場合の説明です。)

ではなぜこの金額が「自己負担額2000円となるふるさと納税の限度額」となるのか、ですが、それは所得税におけるふるさと納税の寄附金控除の効果を見てみると分かります。

先の「課税される所得金額が196万円」の例で、この場合の一般的な限度額(第1限度額)である5万2千円のふるさと納税をしたとします。
すると、所得税では寄附金控除は所得控除なので課税される所得金額は5万円減り、191万円となります。
その結果、限界税率が10%から1段階下がり5%となります。(以下の計算では簡略化のため復興税率を省略。)

この場合は、寄附金控除によって減る税額は単純に5万円×10%=5千円ではなく、
1万円×10%+4万円×5%=3千円となります。
つまり、控除を行っても税率が一定の場合と比較して差額の2千円だけ控除が減る

税金が増え、自己負担額が2千円増え、合計で4千円ということになります。

この所得税における負担増は、住民税の控除でカバーされるのか?ですが、
残念ながらそうならないようです。

住民税の税額控除の額を計算すると、
基本控除分は、(5万2千円-2千円)×10%=5千円
特例控除分は、(5万2千円-2千円)×特例控除割合=4万円で、合計4万5千円。
ここで、この特例控除割合は寄附金がない場合の所得税の限界税率(注)である10%で適用することが重要です。
(注:特例控除割合の計算において、寄附金控除後の所得税の限界税率を参照しているわけではなく、住民税の課税所得を調整して所得税の課税所得に似せた金額を用いるため、この時点で寄附金は関係していません。)
つまり、特例控除割合=100%-基本控除分10%-所得税率相当10%=80%。

よって、「課税される所得金額が196万円」で一般的な限度額(第1限度額)である5万2千円のふるさと納税を行うと、
自己負担額は、3千円+4万5千円=4万8千円を5万2千円から差し引いた4千円となります。

住民税から割り出した2千円の自己負担額で済むという限度額でふるさと納税したのに、自己負担額は4千円じゃないか!
となります。そういう構造なので仕方ないことです。

この場合の2000円の自己負担額で収まるふるさと納税額は、
第1限度額(5万2千円)より小さい第2限度額(1万円)となります。

第2限度額の影響が大きく出る可能性があるのは限界税率20%以上となる所得

この第2限度額の問題が生じるのは、ふるさと納税による寄附金控除で所得税率が変わる可能性のある所得の人、つまり所得税率10%以上の人です。
「第1限度額<第2限度額」となる場合がほとんどですが、まれに「第1限度額>第2限度額」となる場合があります。

ただ、所得税率10%の場合はそれほど第1限度額が大きくないので、自己負担額の増加も少なくて済みます。
問題は、その次の限界税率である20%以上の場合で、影響が大きくなることがあります。

例えば限界税率20%で(その下は10%)、
第1限度額が10万円、第2限度額が2万円の場合は、自己負担額は最大で約1万円に、

限界税率33%で(その下は23%)、
第1限度額が30万円、第2限度額が2万円の場合は、自己負担額は最大で約3万円にもなります。
ですので、「第1限度額>第2限度額」とならないように他の控除を増やすか反対に所得を増やせればいいですが、実際に金額の操作は難しいのであきらめるしかないのかもしれません。

一応、この第2限度額も計算して「第1限度額>第2限度額」の場合は第2限度額を表示できるように「計算ツール」は改良しました。

第2限度額は所得が増えるにつれて第1限度額に近づく

第2限度額は限界税率が適用されている課税所得金額の上積み部分なので、
所得が増えるとその金額は大きくなり、ある所得まで達すると第1限度額を通り越し、この問題は消えます。
そして次の限界税率の段階に達すると、また現れます。

■第3限度額=高所得者等で高額なふるさと納税をした場合の一時所得計上により自己負担額が増加しはじめる限度額

御礼の品(以下、返礼品等)を目当てにふるさと納税を行う人は多いと思います。
この返礼品等を受け取った側はその「価値(経済的利益)」を税法上の一時所得の収入金額に計上することになっています。(国税庁HP)

しかし、この一時所得には50万円までの特別控除があり、返礼品等の「価値」やその他の一時所得を合計した金額(以下、「価値」等)が50万円以下であれば非課税となります。
この「価値」等が50万円を超えると、一時所得による税金が発生します。つまり、自己負担額が増加します。

一時所得がふるさと納税返礼品等以外になければ、「価値」が50万円となるふるさと納税額が、1つの限度額となるということです。

ここで返礼品等の「価値」は、
時価(同じようなものが売られている値段)や中古として買えるときの値段など、モノによっていろいろあります。「~円相当の返礼品」とあればその金額でもいいかもしれません。

また、返礼品の時価相当額を一時所得に計上する時期は、ふるさと納税を申し込んだ年が基準ではなく、その返礼品を受け取った年とされています。(下の国税庁のページを参照)

第3限度額の具体的な計算

ここでは計算がしやすいように、返礼品等の「価値」を一律に『ふるさと納税額の20%』とします。
他に一時所得がなければ、

50万円÷20%=250万円

が、ふるさと納税額による自己負担額が増え始める分岐点、すなわち第3限度額ということになります。

もし、他に一時所得となる収入(保険の満期返戻金の利益や競馬等の払戻金など)があり、
それが40万円あったとしたら、
この第3限度額はさらに低くなり、

(50万円-40万円)÷20%=50万円

となります。給与が2千万円ぐらいで所得税率33%ぐらいになると第1限度額が50万円を超えてくるので、この第3限度額を考慮する必要性が出てきます。

結局、2000円自己負担に収まる限度額は、第1・第2・第3限度額のうち、最も少ない金額

このように所得税率の違いによって条件が変わってくるので、特に所得税率が高い場合はその限度額でふるさと納税をした場合の自己負担額はいくらになるのかを計算してみることをオススメします。

サラリーマンで大まかな所得税率を知りたい場合は、『年収と税金の関係』という記事を、

第2・第3限度額を比較した最小の限度額や、その限度額での自己負担額を計算したい場合は、『計算ツール』の記事を参考にして下さい。

■2000円自己負担に収まらない原因は他にもある:「住宅ローン控除の減少」と「所得税と住民税の課税所得の違い」

これまで説明した第2・第3の限度額を考慮してもなお、2000円自己負担に収まらないことがあります。その原因のうち2つが、以下のパターンです。

①所得税における寄附金控除の増加による住宅ローン控除の合計控除額の減少
②所得税と住民税の課税総所得金額の違いから生まれる特例控除割合のズレ

住宅ローン控除があれば必ず①に該当するわけではなく、②も所得税率が変化する境界付近の所得で起こります。もしこれら2つのパターンに該当した場合は、自己負担額が上乗せされるため、「2000円自己負担に収まる限度額」はそもそも存在しなくなります。
この2つの「自己負担額増加問題」を回避できるかもしれないのが、やはり「ワンストップ特例」の利用です。
以下それぞれのパターンについて少し解説します。

①住宅ローン控除の減少

住宅ロローン控除(住宅借入金等特別税額控除)は少し特殊な控除の仕方をしていて、所得税において控除しきれない住宅ローン控除は住民税から「一定の限度額」まで控除できるものです。

そして「一定の限度額」まで達している場合にふるさと納税による寄附金控除を加えて税額を再計算すると、寄附金控除の影響で住宅ローン控除の所得税と住民税の控除合計額が減少→税額が増加し、結果的にふるさと納税有り無しを比較した場合の自己負担額が2000円を超えてしまうというものです。

以下の記事では、図解でより詳しく説明しています。

②所得税と住民税の課税所得の違い

他の寄付金と異なり、ふるさと納税での減税効果が高いのは、住民税において「特例控除」があるためです。
この特例控除の控除割合は住民税の課税総所得金額から決まります。(横浜市のHP参照)

この特例控除の控除割合は何を意味しているかというと、所得税と住民税(基本控除)で控除しきれなかったふるさと納税を特例控除により控除するための控除割合です。

つまり、“意味合い"として
「控除割合」=「100%-所得税率-住民税基本控除分10%」となります。

ここで、実際の所得税率は所得税における課税総所得金額から決まります。
すると、先の等式の右辺は所得税における課税総所得金額から決まり、左辺の「控除割合」は住民税の課税総所得金額から決まります。

ここで問題が生まれるのが、所得税と住民税の課税所得が異なる場合です。課税所得が異なる原因は「(1)所得額の違い」と「(2)所得控除額の違い」です。

「(1)所得額の違い」は例えば配当所得や繰越控除など、所得税と住民税の制度の違いによるものです。
「(2)所得控除額の違い」は所得税と住民税における基礎控除や扶養控除などの「控除の差額」のうち、生命保険料控除・地震保険料控除・ひとり親控除の男性分・配偶者特別控除(配偶者の合計所得金額が50万円以上の場合)です。

これら以外の「人的控除の差額」は、ふるさと納税の計算上で考慮されて控除割合が決まりますが、上記の所得控除による控除額の違いは考慮されず、その結果、

ある条件では、
「控除割合」<「100%-所得税率-住民税基本控除分10%」となります。

これが原因で、住民税における特例控除額が減り、自己負担額が増えてしまうことになります。

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