ふるさと納税:高所得者・高額納税者でも控除減少の自己負担増に注意 (FX・事業売却など)
このページでは、高所得者、
特に、総合課税以外の分離課税の所得が大きい場合の「ふるさと納税」
への影響を見ていきます。
ふるさと納税の限度額(自己負担額が2000円)は一般的に、住民税の所得割額から計算されます。
この所得割額には分離課税分も含まれるため、例えば非上場株式の譲渡益が1億円や、FXで5000万円の利確なんていう臨時収入があった場合には、限度額がかなり大きくなります。
それでは、
その大きくなった限度額いっぱいまで「ふるさと納税」を行うと、どういうことが起こりうるのか、
それを以下で解説します。
一般的な限度額計算上の控除率は、ふるさと納税前の税率で決まる
住民税の所得割額だけで決まる一般的な限度額を計算するとき、
所得税と住民税で、どちらがどれだけ控除を行うかを分担するための控除率が決められています。
これを「特例控除割合」といいます。
この特例控除割合は、総合課税分の課税所得の金額によって変わります。変わる理由は、所得税率が「累進税率」だからです。
累進税率では、課税所得の金額によって税率が変化します。
ここで重要なのは、特例控除割合を決めるのは、
ふるさと納税による寄付金控除を行う前の税率
だということです。これがどういう問題になるのかは、次で図とともに見ていきます。
具体的な計算例:控除率のもととなる税率にズレがある場合
例として、一般的な限度額が200万円となる次のようなケースを見ていきます。
・給与:約1300万円
・非上場株式の譲渡益:9400万円
・所得控除は最小限の社会保険料:約140万円
このケースで、ふるさと納税がない場合、総合課税の課税所得は950万円、所得税率は33%です。
ふるさと納税200万円をした場合は、総合課税の課税所得は750万円、所得税率は23%です。
この2つを見て、
どちらの所得税率で「ふるさと納税」が控除されているのか、
ということになります。
実は、所得税ではこの2つの税率、33%(50万円に対して)と23%(150万円に対して)で、分割してふるさと納税が控除されています。
それに対し、住民税側は「所得税では全額を、ふるさと納税前の33%で控除している」と予測(仮定)して控除を計算しています。
つまり、控除額の予測と実際には差があることになります。
これをグラフにしてまとめると次のようになります。(自己負担2000円分は省略しています。)
これによると、控除しきれていない額は次の計算式になります。(かいけいセブンのツールの表示を抜粋)
つまり、15万円が控除できず、自己負担額に上乗せされていることになります。
200万円のふるさと納税に対し、約30%相当の返戻品が届いたとすると、
60万円相当の品を15万円で買った、
と同じような意味になります。
これは、
「得しているからいいじゃん」
と思う人がいれば、
「限度額以内なら2000円の自己負担と聞いていたのに、15万円も戻ってこないなんて最悪」
と思う人がいるかもしれません。
どちらにせよ、
「知らなかったというよりは、あらかじめ知っていた方がよいのでは」
というのが、著者の意見です。
もし自分の所得ではどうなのかと気になる方は、「ふるさと納税詳細計算ツール」で確認することをオススメします。
自己負担額を2000円で納める第2限度額
上記の例では、自己負担額を2000円にとどめておけるふるさと納税額は、図からもわかるように、「所得税の税率をまたがない程度」の金額(50万円)になります。
この限度額を、ツールでは「第2限度額」と呼んでいます。
実際に上の例で自己負担額をグラフ化すると次のようになります。(ツールのグラフ作成機能より)
ふるさと納税が50万円を超えると自己負担額が増える様子が分かります。
この第2限度額は、累進税率が適用される総合課税分の課税所得で決まります。
一方、一般的な限度額は、分離課税分の課税所得も併せて決まります。
つまり、
分離課税分の所得が大きいほど「所得税の税率をまたがない程度」を超えるふるさと納税を行う可能性が高まるため、
「高所得者・高額納税者」が対象になってくるというわけです。
※ただし、高所得者でなくても、または分離課税がなくても、総合課税分の課税所得が税率の境界の微妙なところにある場合は、同じように自己負担額がちょっと上乗せされることがあります。