ふるさと納税:ワンストップ特例の利用は「得する限度額」に影響するのか

ふるさと納税:ワンストップ特例の利用は「得する限度額」に影響するのか:税理士試験と税務のメモ http://kaikei7.com/)

(更新:2016年10月26日)

「ふるさと納税」とその「限度額」とは


「ふるさと納税」は別名「ふるさと寄附金」で、
地方自治体(都道府県や市区町村)に、所定の方法で寄付すること
寄付先は、そこが出身地だとか、過去に住んでいたとかは関係ありません。
(学校や公益法人、政治団体などへの寄付とは種類が異なります。)

この寄付の翌年に所得税の確定申告をすることにより
(※2015年4月以降の申込みについては、確定申告義務のないサラリーマン等なら5カ所まで申告不要)、
納める税金(給料から引かれたり自分で納付したりする所得税や住民税)を少し減らしてもらえます

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 『ふるさと納税』の制度の説明や家族構成の例別に控除限度を紹介

先に結論


住民税における寄附金税額控除の特例控除枠に収まるふるさと納税の場合、つまり住民税の所得割から計算した限度額以内のふるさと納税をした場合は、ワンストップ特例でも確定申告でも控除額は一致(端数などを除く)。

この場合はどちらを選択した方が良いかというと、より細かく計算するとワンストップ特例を利用したほうが控除額が大きくなる例も一部ある(「参考1:住宅ローン控除がある場合」「参考2:第2限度額がある場合」を参照)ので、できればワンストップ特例を利用したほうがよさそうです。

一方、
特例控除枠を超えるふるさと納税の場合、つまり住民税の所得割から計算した限度額を超えるふるさと納税をした場合(そもそも自己負担2000円に収まりそうにない場合)は、ワンストップ特例よりも確定申告の方が控除額が大きくなり有利(注)と考えられます。

(注:ただし、それでもワンストップ特例を利用したほうが控除額が大きくなる例も一部あります。「参考1:住宅ローン控除がある場合」「参考2:第2限度額がある場合」を参照)

その理由は以下で示すとおり、控除額の計算方法が異なるからです。


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ワンストップ特例とは

ふるさと納税の「ワンストップ特例制度」は、
  • ふるさと納税の寄附金控除以外に、所得税の確定申告をする必要のない給与所得者等(※)で
  • 同様に住民税の申告も必要がない人が
  • 平成27年4月1日以降のふるさと納税(寄付)をし
  • その寄付先団体が5団体以内である場合に
  • 翌年1月10日までに各団体に特例申請書を提出し
  • 特例申請書に記載した住所と、寄付をした翌年1月1日における住所(市区町村)が同一であれば
  • 確定申告(または市区町村への住民税申告)をすることなしに、
    ふるさと納税による寄付金控除が受けられる特例制度です。
    (※ワンストップ特例対象外について詳しくは、地方税法附則:第7条の1の第6項(第13項)を参照)

    特例申請書を提出後、その同一年内に引越し等で住所が変わった場合は、
    その申請書を提出した団体に「寄付金税額控除に係る申告特例申請事項変更届出書」を
    提出する必要があります。


    ※「確定申告をする必要のない給与所得者等」とは

    所得税が源泉徴収されていて、かつ、一定の要件を満たす
    給与所得者、退職所得者、年金所得者です。

    詳しくは『参考:確定申告不要の条件』を参照してください。


    また、所得税の確定申告が不要であっても、
    住民税のみの申告が必要な場合(例えば給与所得・退職所得以外の所得が20万円以下で、所得税の確定申告義務のない場合)も、
    ワンストップ特例の適用が受けられなくなります



    ワンストップ特例による控除

    まず、ふるさと納税による寄付金の控除は次の3階建てになっています。

    ① 所得税の寄附金控除
    ② 住民税の寄附金税額控除の基本控除
    ③ 住民税の寄附金税額控除の特例控除


    特例対象外の場合

    ワンストップ特例の対象外である人(例えば個人事業主など)は、
    所得税の確定申告で寄付金控除欄にふるさと納税額、
    寄付した地方公共団体名を記載し
    寄付金の受領証を添付して申告すると、
    上の①②③の控除が受けられます。


    特例対象者が特例申請書を提出しなかった場合

    ワンストップ特例対象者が、
    「特例申請書を提出せず」に確定申告もしないと、
    上の①②③の控除は受けられず、
    ふるさと納税した全額が「寄付(自己負担)」となります。


    特例対象者が特例申請書を提出したが、確定申告をする場合

    ワンストップ特例対象者が、
    「特例申請書を提出」しているが
    雑損控除や医療費控除、もしくは年末調整で控除不足のものがあったり、
    株取引の赤字の繰越や、過去の赤字と相殺するための繰越控除などにより、
    (その他、
    非上場株式の配当があり確定申告が必要な場合(住民税のみの申告が必要な場合であっても)や、
    ふるさと納税のために源泉徴収ありの特定口座株利益をあえて申告する場合など)
    確定申告をしようとする場合は、
    「特例対象外の場合」と同様に寄付金控除を一緒に申告する必要があります。
    申告をすると、上の①②③の控除が受けられます。


    特例対象者が特例申請書を提出し、確定申告をしない場合

    ワンストップ特例対象者が、
    「特例申請書を提出」し、確定申告をしない場合は、
    上の①の控除が受けられない代わりに、
    次の④の申告特例控除額が住民税の所得割から追加で控除されます。

    ① 所得税の寄附金控除
    ② 住民税の寄附金税額控除の基本控除
    ③ 住民税の寄附金税額控除の特例控除
    ④ 住民税の寄附金税額控除の"申告"特例控除

    これは、
    地方税法附則(e-Govのページ)の「寄附金税額控除に係る申告の特例等」の項目に記載があります。

    附則:第7条の2の第1項(第4項)
    (上略)申告特例通知書の送付があつた場合においては、 申告特例控除額を当該納税義務者の第三十七条の二第一項及び第二項の規定(寄付金税額控除の基本控除と特例控除)を適用した場合の 所得割の額から控除するものとする。
    ※かっこ書きは便宜上、書き加えたものです。

    ワンストップ特例による「申告特例控除」の控除額は

    先に示した「④申告特例控除」の額はどうやって決まるのかです。
    同じく地方税法附則の第7条の2の第2項(第5項)をみると、次のような記載があります。
    (上略)第三十七条の二第二項に規定する特例控除額に、 次の表の上欄に掲げる第三十五条第二項に規定する課税総所得金額から 第三十七条第一号イに掲げる金額(人的控除の差額)を控除した金額(およそ所得税の課税総所得金額と同じ)の区分に応じ、 それぞれ同表の下欄に掲げる割合を乗じて得た金額とする。
    ※かっこ書きは便宜上、書き加えたものです。

    「同表の下欄に掲げる割合」の例として、
    例えば所得税率が5%の人の場合は、「85分の5」となっています。
    (※復興税による補正については第7条の3に記載されています。)


    では、具体的に数字を当てはめてみると、
    所得税率が5%の人の場合で、ふるさと納税の限度額の目安の範囲内の人は、
    先に示した②③④の控除は、(復興税の補正をせずに説明すると)

    ②基本控除分:10%
    ③特例控除分:100-5-10 = 85%
    ④申告特例控除分:③×5÷85 = 5%

    となり、
    結局、所得税の確定申告をせず控除しなかった分「①所得税控除分:5%」と
    ④が同じ金額となります。


    「①所得税控除分」と「④住民税申告特例控除分」の違い

    しかし、
    ワンストップ特例により受けられない「①所得税控除分」と、
    ワンストップ特例で追加された「④住民税申告特例控除分」が
    どの状況でも同じになるとは限りません。



    というのも
    「④申告特例控除分」はあくまでも「③特例控除分」をもとに計算されているからです。


    「③特例控除分」は、住民税の調整控除後所得割の2割が限度でした。
    この限度を超えてふるさと納税をすると、
    「③特例控除分」は同じ額のままなので、「④申告特例控除分」も同じまま。

    ですが、
    「①所得税控除分」はまだ限度に達していないので、
    目安の限度を超えてふるさと納税をしても増え続けます。
    (ただし、増え方は所得税率に応じます。)

    下図は所得税率5%、独身年収300万円の場合の、寄付額に対する控除額の模式図(復興税省略)。2.8万円が③特例控除分の限度、76.8万円が①所得税控除分の限度となるふるさと納税額です。
    ワンストップ特例:寄付額に対する控除額の模式図

    つまり、
    ふるさと納税の2000円自己負担分を除いた全額が控除される寄付金額の目安以上
    寄付をすると、「①>④」となり、
    確定申告した方が控除がトータルで大きくなる
    ことになります。


    ワンストップ特例の利用は「得する限度額」に影響するのか

    以上を読んでいただくと分かるとおり、
    2000円自己負担分を除いた全額が控除される寄付金額の目安の範囲内であれば、
    ふるさと納税の得する限度額に対する影響はないのではないでしょうか。

    (そもそも、影響がないように作られた特別な制度だと思いますので。)

    ですので、
    ワンストップ特例対象者は、なるべく確定申告の手間を省けるように、
    この制度を利用した方が良いと思います。

    というのも、
    サラリーマンが慣れていない確定申告するためには、
    仕事があるので平日には確定申告会場に行けず、
    1回以上あるかないかの土曜開庁の日に、
    行列に並んで申告しに行かなければなりません。
    そんな手間は御免だと思います。


    参考1:ワンストップ特例と住宅ローン控除

    以下の過去記事では、

    ふるさと納税:住宅ローン控除との併用は「得する限度額」に影響するのか

     住宅ローン控除により、ふるさと納税の寄附金控除が引ききれなくなることがあるかどうかを検証

    ふるさと納税する前から、
    住宅ローン控除が住民税の方で控除限度に"達している場合"において、
    「所得税分のふるさと納税の恩恵」が受けられない可能性があると書きました。

    ワンストップ特例を利用すると、
    所得税分の寄付金の所得控除による影響は(おそらく)関係なくなりますので、
    住宅ローン控除の限度額にも影響せず、

    「所得税分のふるさと納税の恩恵」が「④申告特例控除」として
    戻ってくるのではないかと考えられます。

    もしそうなら、
    住宅ローン控除が住民税の方で控除限度に"達している場合"は
    ワンストップ特例を利用(住宅ローン控除は年末調整で)した方が有利
    つまり、より多く税金が減額されることも考えられます。

    理論上はそうなりそうなのですが…。
    念のため、注記があるかどうか確認中です。


    参考2:ワンストップ特例とふるさと納税の第2限度額の関係

    ふるさと納税でできるだけ自己負担額を少なくしたい場合は、得するための限度額を計算してその範囲内で行いますが、その限度額は1種類とは限りません。

    以下の記事では、ある条件ではもっと限度額が低くなる第2限度額というものを計算していますが、この第2限度額はワンストップ特例を利用した場合は考える必要はなくなると考えられます。

    つまりその場合は、確定申告よりもワンストップ特例を利用した方が有利、となる可能性があります。

    ふるさと納税:2000円自己負担に収まらないのは第2・第3限度額があるため(所得税率10%以上なら注意)

     いろんなサイトでふるさと納税限度額を計算したのに2000円自己負担に収まらないのは第2・第3限度額があるため


    オススメの参考図書


    参考:確定申告不要の条件

    その収入金額が一定額以下で、かつ、
    所得税が源泉徴収をされている場合に確定申告不要ということがあります。
    海外勤務があったりする場合など、詳しくはお近くの税務署等で確認してください。

    以下は参考までに概要を列挙します。

    給与所得者(サラリーマン)

    給料、賞与、その他課税手当(以下、給与等)の年間合計額が2,000万円以下であり、かつ、
    以下の条件を満たす。

    ・勤め先が1か所のみで、毎月の給与等から所得税が源泉徴収されていて、かつ、
    給与所得、退職所得を除く所得金額が20万円以下。

    ・勤め先が2か所以上で、毎月の給与等から所得税が源泉徴収されていて、かつ、
    主たる給与以外の給与の"収入"金額(源泉徴収の際に扶養控除等が考慮されていない会社からの給与等)と
    給与所得・退職所得を除く"所得"金額との合計額が20万円以下。

    ・勤め先が2か所以上で、毎月の給与等から所得税が源泉徴収されていて、かつ、
    年間の給与の"収入"金額の合計額が、150万円+各種所得控除額(雑損、医療費、寄付金、基礎の控除額を除く)以下で、
    さらに、給与所得、退職所得を除く所得金額が20万円以下。


    ※ただし、同族会社からの給与や、災免法の適用を受けるなどで一定の場合は確定申告が必要になることがあります。

    退職所得者(年内に退職金を受け取った人)

    ・年間の退職手当等を受け取ったごとに「退職所得の受給に関する申告書」を提出し、
    その所得税が源泉徴収をされている場合。

    ・「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合で、
    その退職手当等から計算された所得税額が、実際に源泉徴収された所得税額以下である場合。

    年金所得者(老齢年金等の公的年金を受け取っている人)

    ・公的年金の年間収入金額(税引前)が400万円以下で、
    その所得税が源泉徴収をされていて、かつ、
    年間の退職所得、公的年金に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下ならば、
    年間の課税退職所得金額以外の課税所得金額にかかる所得税は確定申告不要。


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