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所得税と個人住民税:相違と類似

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『所得税』と『(個人)住民税』は
一応、互いに独立した異なる税目ですが、
似ているところがありますので、
実務と試験の両方のための備忘録を作っています。
あくまでご参考程度に。

ちょっと古いですが、国税庁の資料で
所得税と個人住民税との関係について-わが国個人所得課税のメカニズム-
という論文も参考になりました。

制度に関する相違点・類似点

税額の確定方法

申告納税制度(納税者側が税額計算し自己申告)
賦課課税制度(役所側が税額計算し納税者に通知)

住所地に納税義務が発生する判定日(賦課期日)

年度の初日の属する年の1月1日の住所地

扶養等判定期日

その年12月31日(もしくは死亡の時)
前年の12月31日(もしくは前年の死亡の時)

給与からの天引きの名称

源泉徴収(その月の支給額に基づき計算)
特別徴収(その月の支給額とは無関係に、前年の所得に基づいて計算された額)

天引きの意味

年間所得確定前に税負担を求める前取り的(確定申告や年末調整による精算を前提)
既に確定した前年の所得に対する税額を分納(後払い的)

給与からの天引きする額

毎月の支給額を基に源泉徴収税額表から読み取った額
5月に市町村から送付される通知書記載の額

賞与からの天引きする額

賞与に係る源泉徴収税額表から読み取った額
なし(前年の賞与を合わせた前年所得で計算された額を、毎月平均で給与から天引きしているため)

退職手当からの天引き

「退職所得の受給に関する申告書」で計算した額を源泉徴収
「退職所得申告書」(用紙は所得税のものと同一)で計算した額を特別徴収(申告納入)

主な税率

累進課税税率×復興特別税率(最高45.945%)
均等割+所得割(10%課税)

給与所得者のための会社側の年末調整関係の提出義務書類(法定調書)

給与所得の源泉徴収票(税務署へ提出)
給与支払報告書(市区町村へ提出)

税制改正により給与から天引きされる税額に影響がでるタイミング

1月徴収分から変更(源泉徴収税額表が改定)
6月徴収分から変更(特別徴収の区切りは毎年6月から翌年5月まで)

計算上の相違点(平成27年分)

税率等

課税所得金額の税率%

所得税
(復興税含む)
住民税合計%
小計
総所得累進税率
(5.105~45.945)
641015.105
~55.945
短期譲渡(一般)30.635.43.6939.63
短期譲渡(軽減)15.31532520.315
長期譲渡(一般)15.31532520.315
長期譲渡(軽課)10.212.41.6414.21
上場株式等の配当15.31532520.315
株式等譲渡15.31532520.315
先物取引15.31532520.315
山林5分5乗のうえ
累進税率
6410
退職累進税率
(5.105~45.945)
641015.105
~55.945


源泉徴収関係の税率%

所得税
(復興税含む)
住民税合計%
小計
利子所得
源泉分離/利子割
15.31505520.315
上場配当
源泉徴収/配当割(個人)
15.31505520.315
上場配当
源泉徴収/配当割(法人)
15.31500015.315
上場株式
源泉徴収/株式等譲渡所得割
15.31505520.315


配当控除における配当所得の金額に乗じる率%

所得税住民税合計%
小計
課総等1000万円以下
配当等101.61.22.812.8
一般外貨建等
以外の証券投信
50.80.61.46.4
一般外貨建等
証券投信
2.50.40.30.73.2
課総等1000万円超
配当等50.80.61.46.4
一般外貨建等
以外の証券投信
2.50.40.30.73.2
一般外貨建等
証券投信
1.250.20.150.351.6

利子所得

源泉分離(源泉徴収義務があるもの)
県民税の利子割課税(特別徴収)

上場株式に係る配当所得

上場分離(株式等譲渡損との損益通算可)/総合課税(配当控除あり)/申告不要(源泉徴収で完結)の選択
上場分離(株式等譲渡損との損益通算可)/総合課税(配当控除あり)で申告した場合は県民税の配当割課税(特別徴収)かつ配当割控除あり。所得税で申告不要にした場合は配当割課税で完結。

未公開株式に係る配当所得

総合課税(配当控除あり)/申告不要(少額配当の場合に源泉徴収で完結)の選択
すべて総合課税(配当控除あり) ⇒ 未公開配当所得があるときは所得税側と住民税側の課税標準(合計所得金額)に差が生じる一因に。

上場株式に係る譲渡所得

株式分離/源泉徴収ありの特定口座内なら申告不要
株式分離で申告した場合は県民税の株式等譲渡所得割課税(特別徴収)かつ株式等譲渡所得割控除あり。源泉徴収あり特定口座で申告不要にした場合は株式等譲渡所得割課税で完結。

割引債の償還差益

雑所得の発行時源泉分離(税率18.378%)
所得割非課税

退職所得

源泉徴収し、確定申告で精算可能
退職所得の課税の特例により所得控除、税額控除の適用は無い(現年分離課税特別徴収)

住宅家財の災害による損害の軽減税制

災害減免法(単年適用)か雑損控除(繰越適用可)の選択
雑損控除のみ適用 ⇒ 課税標準に差が生じる一因

のりかえ規定

所得税で「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出がなくても、住民税で青色事業専従者給与の適用を受けられる。
例えば、所得税側で扶養控除(38万円控除)を適用していた場合、住民税側で扶養控除(33万円控除)するよりも青色事業専従者給与が33万円超38万円以下なら後者を適用した方が有利。

純損失に係る繰戻還付

純損失は繰越控除、もしくは繰戻還付を選択
なし ⇒ 住民税には繰戻還付の制度がないので、繰越控除のみ

非居住者期間の課税区分

非居住者期間の国内源泉所得には総合課税と分離課税がある
住民税は非居住者期間の国内源泉所得には、すべて総合課税

エンジェル税制(特定中小会社が発行した株式の取得に関して)

投資時点(払込により取得した場合の取得費の取得年控除または取得年の寄附金控除)に加え、
売却時点(譲渡損失の繰越控除)の優遇措置対象
売却時点の優遇措置のみ対象

所得控除額の差

社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除はまったく同じ。雑損控除、医療費控除は課税標準が同じなら同額。それら以外は控除差額あり。
寄附金にかかる所得控除は税額控除に移行。人的な所得控除の差額は調整控除の計算の基礎となる。

人的控除の適用判定

合計所得金額による判定
適用要件となる合計所得金額が、未公開株式の配当所得により所得税分より住民税分の方が多くなることがあり、住民税でのみ適用できない人的控除が発生する可能性がある。

控除対象の寄附金の種類

所得税のみ:国、政党等、認定NPO法人等、公益社団法人等、ほか
所得税と住民税共通:住所地の共同募金会、住所地の支部への日本赤十字社に対する寄附金

寄附金にかかる控除

所得控除(課税標準の40%限度)
税額控除(課税標準の30%限度の基本控除に加え、地方公共団体に対するものは特例控除あり)

税額控除の種類と順序

配当控除→措置法の税額控除→(復興特別所得税額の計算)→外国税額控除
調整控除→配当控除→住宅ローン控除→寄附金税額控除→外国税額控除→所得割の調整→配当割/株式等譲渡所得割の控除

調整控除

なし
所得税から住民税への税源移譲に伴い、最低税率(5%⇔10%)が入れ替わり、移譲後に人的所得控除の差額の部分にかかる住民税額が増えた分を調整するためにある

住宅借入金等特別税額控除(住宅ローン控除)

所得税額を限度に税額控除
所得税額超過分を対象に、控除限度は所得税の課総等の5%/7%もしくは97,500円/137,500円、平成19・20年入居またはバリアフリー/省エネ改修の特定増改築等は住民税では控除対象外。

山林所得の5分5乗課税、平均課税制度

あり
なし(税源移譲により累進課税ではなくなったため)

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