ふるさと納税:「平均課税」で利用した場合は損か得か?【平均税率が下がれば自己負担どころか還付が増えることも】

ふるさと納税:「平均課税」で利用した場合は損か得か?【平均税率が下がれば自己負担どころか還付が増えることも】

(更新:2017/05/28) 図を追加

「ふるさと納税」とその「限度額」とは


「ふるさと納税」は別名「ふるさと寄付金」で、
地方自治体(都道府県市区町村限定)に、所定の方法で寄付すること
寄付先は、そこが自分の出身地だとか、過去に住んでいたとかは関係ありません。
(町内会や学校、公益法人、政治団体などへの寄付とは種類が異なります。)

この寄付の翌年に所得税の確定申告をすることにより(※確定申告義務のないサラリーマン等なら、所定の手続きにより5カ所の寄付まで確定申告不要)、
納める税金(給料から引かれたり自分で納付したりする所得税や住民税)から、自己負担額を差し引いた金額(最大で寄付した金額から2000円を除いた額:例えば寄付1万円で最大8000円)を減らしてもらえます

つまり、納付する税金の一部を、好きな町などへの寄付金に変えることができます。

それだけではなく「ふるさと納税」なら、寄付に対する御礼の特産品等を自由に選び、送ってもらうことができます。「御礼の品が自己負担額以上の価値があるもの」を選ぶことで、結果的に家計の出費が減ることになります。

ただし、最大限の減税効果を得る(自己負担額を少なくする)には、所得状況に応じた一定限度の寄付額に抑える必要があります。

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先に結果の説明

平均課税を適用する場合で、ふるさと納税をすると次のようなことになります。

【負担が増える】
平均課税によって税率が下がれば、ふるさと納税による所得控除の減税効果も小さくなるので自己負担額が増える。

【負担が減る】
ふるさと納税により平均課税の平均税率を決める課税所得が減るので、平均税率が下がれば減税効果が大きくなる。


『ふるさと納税により平均税率が下がる場合』
平均課税対象の所得が多いほど、平均課税による減税効果は大きいので、負担増よりも負担減が上回る可能性がある。

次の図は、ふるさと納税の限度額以内に平均税率が1%下がる寄付額が存在する設定例での自己負担額の推移です。(自己負担額に平均税率が下がった場合の節税効果を含んでいます。)平均税率が下がることで平均課税の節税効果が大きくなり、自己負担額がマイナスとなる寄付額のゾーンが存在する場合があります。

平均課税を適用していて、ふるさと納税の限度額以内でふるさと納税したら平均税率が1%下がる場合


一方、限度額以内に平均税率が1%も下がらない場合は、次の図のように負担増の部分だけ現れ、自己負担額は限度額以内であっても2000円に収まりません。(限度額を超えると自己負担額が増加するのは一般的なふるさと納税の特徴です。)
平均課税を適用していて、ふるさと納税の限度額以内でふるさと納税しても平均税率が1%も下がらない場合


平均課税を利用している場合での「ふるさと納税」の注意点

以上から、平均課税とふるさと納税を併用している場合の注意点は、「(平均課税を利用しない場合の)限度額計算式の金額では限度額をオーバーしてしまう」ではなく、「限度額計算式の金額以内で平均税率が1%も下がらない場合はその金額以内であっても自己負担額は2000円を超えてしまう」ということになります。

また、限度額の計算について言うと、平均課税を利用しているか否かにかかわらず、限度額計算式の金額を超えると自己負担額の増加率は上がります。ですので、もともとの限度額の計算自体には意味がありますし、平均課税を利用していてもその額は同じ(計算に注意は必要)です。




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平均課税とは?

大雑把に説明すると以下のようになります。

給与所得や事業所得、不動産所得などの累進課税対象の所得(総合課税分の所得)では、所得が多いほど税率階層(5%~45%)が高くなります。

臨時的な所得や変動の大きい所得があると、その年の所得をすべて累進課税で適用すると、税率階層が高い部分まで及んでしまいます。

その所得の中に、平均課税対象の所得があるとその対象所得の80%分は累進課税適用の所得から除いてしまい、除かれて所得が少なくなった場合での累進課税の税率階層を適用します。すると、除く前の税率階層よりも除いた後の税率階層の方が低くなることがあり、先ほど80%分除外した所得とその低くなった税率階層で計算した税額における「平均税率」をもとに、先ほど除いた80%分の税額も計算します。

平均課税の大きな特徴として、「平均税率」は1%未満は切り捨てされますので、1%変わる場合に税額も大きく変わります

平均課税を適用して節税となった場合、さらにこの「平均税率」を1%でも下げることができれば、より大きな節税となります。


「ふるさと納税」の効果

平均課税における「平均税率」を下げるには、所得控除を増やして課税所得を下げるというのが1つの手ですが、所得控除を増やすために余計な出費が増えてしまうと節税効果が薄れてしまいます。

ですが「ふるさと納税」なら、条件が合えば、その寄付金としての出費の大部分は所得税と住民税の減額として相殺されます。とすれば、「ふるさと納税」は課税所得を無理なく下げて、「平均税率」も下げる手段として活用できるのではないか、と思いました。

となると、気をつけるべきは「ふるさと納税」をする寄付額です。先ほどの『寄付金としての出費の大部分は所得税と住民税の減額として相殺』するには条件があることはサラリーマンでも良くご存知だと思います。いわゆる「ふるさと納税の限度額」です。


「ふるさと納税」で平均税率を下げ、かつ自己負担額が最小となる『最適な限度額』があるか?

一般的な限度額の計算式

平均税率が下がるかどうかの前に、一般的に自己負担額が最小となる「ふるさと納税の限度額」の計算式を見てみます。良く見るふるさと納税の最適な限度額の計算式は次のものだと思います。

限度額=( 住民税の所得割額 × 20% )÷( 90% -【所得税率(復興税率含む)】)+ 2,000円

この式の限度額は、住民税の寄付金税額控除の特例控除枠が限度に達したときの寄付金額を意味しています。これを超えてふるさと納税すると確実に自己負担が増えていきます。
逆にこの限度額でふるさと納税すると、住民税の寄付金税額控除の特例控除枠が十分使えるので、『最適な限度額』といわれます。(ただし、自己負担額が2000円で収まるとは限りません。後述を参照。)


この式の【所得税率】は平均課税を適用した場合の税率ではないです。というのは、この式の( 90% -【所得税率(復興税率含む)】)はもともと住民税の寄付金税額控除の特例控除分の特例控除割合から来ています。それで、この特例控除割合は、実は所得税額を計算したときの所得税率を参照しているわけではなく、住民税の課税総所得金額から決定しています。平均課税の適用は考慮されません。

ということで、限度額の式には平均課税適用前の税率を入れます。

※ところで、その式に平均課税適用時の税率(平均税率ではなく、累進課税適用部分の税率)を入れたら、損をするかというと、そうでもないです。上の式の【所得税率(復興税率含む)】に平均課税で下がった税率階層の税率を入れると、分母が大きくなって、式で求まる金額は小さくなります。限度額が過大になるよりかは少な目になるほうが安全なので、使えなくはない、ということです。

平均課税を利用してふるさと納税すると【負担が増える】けれど…

では、この限度額でふるさと納税した場合に、そのふるさと納税による自己負担額は2000円になるのかどうか、という問題です。先に結論ですが、限度額以下であっても自己負担額は2000円を超えます。

というのも、2000円自己負担額で済むのは、平均課税を適用していない場合で、かつ限度額以内の場合です。実際の所得税における所得税率が平均課税によって下がっているので、所得税の寄付金控除による所得税額の減税効果も下がります。よって、平均課税で所得税率が下がっている場合は自己負担額は2000円を超えていきます。

平均課税を適用していて、ふるさと納税の限度額以内でふるさと納税しても平均税率が1%も下がらない場合

ですが、(限度額以内での)その自己負担額の増加は、もし平均税率が1%下がった場合には無視できるほど小さくなります

では、その限度額が、平均税率を下げるための『最適な限度額』であるのかどうかです。


平均税率を下げ、かつ自己負担額を挽回する「ふるさと納税」の『最適な限度額』があるか?

実は、平均税率を下げるための『最適な限度額』は、個別に計算するしかありません。

というのも、先ほどの式で計算した限度額でふるさと納税をしても平均税率が下がらない場合もあるからです。なので、平均税率が下がることを確認する必要があります。

具体的には、次のような手順になるかと思います。

①計算する年の総合課税分の所得と平均課税対象の所得の情報を可能な限り予測する

②平均課税における平均税率が6%以上であることを確認(平均税率が5%だと下げる余地がない)

③限度額を計算し、その限度額以内でふるさと納税の寄付をした場合に平均税率が1%でも下がるか確認

所得の程度によっては1%も下がらないことがあります。逆に、1%でも下がるなら、ふるさと納税によって所得税額は大きく下がる可能性があります。(平均課税は所得税のみの制度なので、住民税はふるさと納税による影響だけとなります。)


計算が大変、なのでツールで試算

②③のような難しい計算をいったい誰がしてくれるのか、と言われるかもしれませんが、それをシミュレーションできるツールを作りました。

給料,年金,副業,自営業から所得税,住民税,社会保険料,手取りの簡易計算ツール

 年金,自営業や、株,FX,譲渡所得あり、副業収入、配偶者の収入、ふるさと納税その他の控除などを自由に設定して高精度で計算できます


以下はその計算例です。

講師業を営む人が本を出版し、原稿料収入がありました。(もしくは不動産賃貸業を営む地主が不動産所得となる借地権の更新料を受け取りました。)

その年の事業所得は1000万円、うち平均課税対象の所得は500万円とします。社会保険料は80万円としておきます。他には所得はありません。

平均課税適用(ふるさと納税を行わない場合)
平均課税における平均税率は11%です。所得税・住民税の合計額は1,886,500円です。
この平均税率を1%下げるには所得控除額はあと71,000円とあるので、この場合のふるさと納税の最適な限度額は71,000+2,000=7.3万円以上、26.8万円以下となります。

ですので例としてこの状況で、ふるさと納税を10万円(少なくとも7.3万円以上)行ったとします。

平均課税適用(ふるさと納税を行った場合)

その結果、平均税率は11%から10%と減り、所得税・住民税の合計額は1,750,600円で、ふるさと納税で出費した10万円を合わせると1,850,600円。ふるさと納税しない場合の税額の合計との差引、35,900円のマイナスとなり、節税となります。

この場合は、ふるさと納税10万円しているのに、自己負担額が2000円どころか、3万円以上現金で得しています

平均課税を適用していて、ふるさと納税の限度額以内でふるさと納税したら平均税率が1%下がる場合

所得の桁が増えると節税額の桁も増えることがありますが、計算してみないとわかりません。

また、ふるさと納税の区切りの年末までに所得を把握するのも難しいことがほとんどなので、平均課税適用できそうな場合はとりあえずいくらかのふるさと納税をしておいて、年明けの所得税計算後に1%下がって得していた、ということがあるくらいでしょうか。

以上、ふるさと納税と平均課税の関係はこのような形になっていることはあまり見たことがないので、記事にしてみました。


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