税金計算システム構築上の疑問点など

所得税, 住民税 102回 閲覧

計算ツールを作る過程で、注意点、疑問に思ったこと、未解決の問題についてまとめました。

給与所得と年金所得がある場合の計算過程(令和2年以後)

【改正その1】
年金の雑所得を計算する際に「公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額」の計算が必要になった。

【改正その2】
所得金額調整控除が創設され、合計所得金額の計算の前に総所得金額の計算上、給与所得から差し引くことになった。また、所得金額調整控除の計算要素として、給与所得と年金雑所得の金額が必要。

この改正により、給与と年金がある場合に計算過程がややこしくなる。

計算過程

この2つを考慮して、合計所得金額までの計算の順序を書くと以下のようになる。

(1)年金雑所得以外の所得を計算

(2)年金雑所得の計算
①「公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額」を計算するために、仮の所得金額調整控除(下の「各種の定義」の※給与所得がある場合)を計算

②仮の所得金額調整控除の金額を用いて「公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額」を計算し、年金雑所得が確定

(3)すべての所得金額が確定したので、合計所得金額を計算するために、改めて所得金額調整控除(上で計算した仮の控除額に加え、※給与所得と年金所得がある場合を加算)を計算

(4)合計所得金額を計算

各種の定義

本当にこんな計算をしなければいけないのかと疑問に思い、各種の定義を見直してみました。

まず、「公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額」の「合計所得金額」は通常の合計所得金額(分離課税等を含み、総合長期譲渡と一時所得を2分の1にし、所得金額調整控除を行い、損益通算を行った後)なのか。

〇所得税法 (雑所得)第三十五条第四項第一号
「その年中の公的年金等の収入金額がないものとして計算した場合における第二条第一項第三十号(定義)に規定する合計所得金額(次号及び第三号において「公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額」という。)」

〇所得税法 (定義)第二条第一項第三十号のロ (※寡婦についての定義の中)
「第七十条(純損失の繰越控除)及び第七十一条(雑損失の繰越控除)の規定を適用しないで計算した場合における第二十二条(課税標準)に規定する総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額(以下この条において「合計所得金額」という。)」

このままでは「総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額」とあり、他の分離課税(例えば「先物取引に係る雑所得等の金額」)が含まれていないように見えますが、他の分離課税が規定されている租税特別措置法の条文で後付けされます。

〇租税特別措置法 (先物取引に係る雑所得等の課税の特例) 第四十一条の十四の第二項の第一号
「所得税法第二条第一項第三十号から第三十四号の四までの規定の適用については、同項第三十号中「山林所得金額」とあるのは、「山林所得金額並びに租税特別措置法第四十一条の十四第一項(先物取引に係る雑所得等の課税の特例)に規定する先物取引に係る雑所得等の金額(以下「先物取引に係る雑所得等の金額」という。)」とする。」

結果として年金雑所得を計算する際の「合計所得金額」は、年金のみを除外した通常の合計所得金額(分離課税を含む)と読める。


※ちなみに、所得金額調整控除の条文は租税特別措置法にあります。

〇租税特別措置法 (所得金額調整控除)第四十一条の三の三
(※給与所得がある場合)[子ども・特別障害者等を有する者等]
「その年中の給与等の収入金額が八百五十万円を超える居住者で、特別障害者に該当するもの又は年齢二十三歳未満の扶養親族を有するもの若しくは特別障害者である同一生計配偶者若しくは扶養親族を有するものに係る総所得金額を計算する場合には、その年中の給与等の収入金額(当該給与等の収入金額が千万円を超える場合には、千万円)から八百五十万円を控除した金額の百分の十に相当する金額を、その年分の給与所得の金額から控除する。」

(※給与所得と年金所得の双方を有する者)
「その年分の給与所得控除後の給与等の金額及び公的年金等に係る雑所得の金額がある居住者で、当該給与所得控除後の給与等の金額及び当該公的年金等に係る雑所得の金額の合計額が十万円を超えるものに係る総所得金額を計算する場合には、当該給与所得控除後の給与等の金額(当該給与所得控除後の給与等の金額が十万円を超える場合には、十万円)及び当該公的年金等に係る雑所得の金額(当該公的年金等に係る雑所得の金額が十万円を超える場合には、十万円)の合計額から十万円を控除した残額を、その年分の給与所得の金額(前項の規定の適用がある場合には、同項の規定による控除をした残額)から控除する。」

令和3年度の住民税の人的控除の差額

人的控除の差額は、所得税と住民税の特定の所得控除の差額で、調整控除や寄附金税額控除の計算に用いる金額です。

配偶者特別控除

配偶者特別控除における、所得税と住民税の人的控除の差額は前回の改正で例外的※な計算になっていました。

※もともと、個人住民税の税率を5%から10%へ税源移譲した際に、調整控除で人的控除差の差額分の負担を軽減するためのものでしたが、そのあとの改正で配偶者特別控除の枠が拡大したために、実際の差額計算ではなくなりました。

今回の扶養判定所得の10万円引き上げで、とうとう無くなるのではないかと思っていましたが、令和2年8月28日現在、地方税法は来年度分の記載がまだなく、市町村のページも以下を除いてあまり記載がないため、ツールでは野々市市のページにあるように、令和2年度の配偶者の対象所得範囲を10万円スライドさせて控除額を残しています。

野々市市のページ

基礎控除

改正により基礎控除も段階的に減額になっているので、所得税と住民税との差額も変化します。

調整控除の計算上、これまでの地方税法には「五万円」として、基礎控除の控除差額に対応する金額を使用していました。
改正でこの定額分が段階的に変わるかどうか。

ツールでは調整控除の計算上、基礎控除額が変化する合計課税所得2400万~2500万の間でも、定額のまま「五万円」で今まで通り計算しています。(ただし、合計所得金額が2500万円を超えると調整控除の適用はなくなります。)

※寄附金税額控除の特例控除割合の計算上は、基礎控除の人的控除差額の変化をそのまま計算に組み込んでいます。

共働き世帯における所得金額調整控除(子ども等)→両親適用可

また例外が作られました。

所得金額調整控除(子ども・特別障害者等を有する者等)の適用対象者の要件にある「扶養親族を有する者」に関して国税庁HPに注記がありました。

この控除は、扶養控除と異なり、同一生計内のいずれか一方のみの所得者に適用するという制限がありません。したがって、例えば、夫婦ともに給与等の収入金額が850万円を超えており、夫婦の間に1人の年齢23歳未満の扶養親族である子がいるような場合には、その夫婦双方が、この控除の適用を受けることができます。 

つまり、扶養控除/障害者控除を受けている側(給与収入850万円以上)だけでなく、控除を受けていない配偶者(給与収入850万円以上)に対してもこの所得金額調整控除が適用されるということ。子育て・介護世帯への配慮からそのようになったのですね。

所得金額調整控除に関するFAQ(源泉所得税関係) – 国税庁にもFAQとして載っています。